2014/10/3 第6回 2014年凱旋門賞、いよいよ迫る
Text by 成澤大輔(ダビスタ伝道師)

今週末の10月5日(日)には、新潟競馬場で秋競馬の最初のGⅠ・スプリンターズSが行われますが、それよりも大きな注目を集めるのは、フランス・パリ郊外のロンシャン競馬場にて争われる凱旋門賞のほうでしょう。
スタート時刻は、日本時間で深夜11時30分。
フジテレビ系列の地上波とCSのグリーンチャンネルで実況生中継されます。

日本からは桜花賞馬のハープスター、昨秋の天皇賞(秋)から負け知らずのジャスタウェイ、GⅠ5勝のゴールドシップら、最強クラスの3頭が参戦します。
現地メディアには「今年はついに日本馬が勝つかもしれない」との観測記事が掲載され、イギリスのブックメーカー(公認賭け屋)もこぞって上位人気に支持しています。
いよいよ日本競馬の悲願が叶えられるときが来たのかもしれません。

しかし、そこは何といっても凱旋門賞。
イギリスのタグルーダ、フランスのアヴニールセルタンというそれぞれの最強3歳牝馬を始め、一筋縄ではいかない英仏独の実力馬がずらりと顔を揃えました。
何しろ、92回開催された凱旋門賞の歴史の中で、ヨーロッパ馬以外の馬が勝ったことはありませんから。
ヨーロッパ馬が今年もまた高く、強固な壁となって日本馬に立ちはだかるでしょう。

それにしても、凱旋門賞制覇が日本競馬にとってこれほど大きな目標となったのは、いつからなのでしょう。
凱旋門賞に日本馬が挑んだのは1969年のスピードシンボリ(シンボリルドルフの母父)が初めてですが、近年の凱旋門賞挑戦史のルーツは20年前の1994年にあります。
この年の日本競馬はナリタブライアンの三冠達成に湧きましたが、一方で武豊騎手による日本人初の海外G1制覇と凱旋門賞騎乗、サンデーサイレンス産駒のデビューというエポックメイキングな出来事がありました。

『ダビスタ』も1月にスーパーファミコン版『ダービースタリオンⅡ』が発売され、のちの大ヒットにつながる新たなステージに上がりました。
もちろん、種牡馬にサンデーサイレンスはまだいません。
100頭の種牡馬リストトップはノーザンテースト。
以下、シンボリルドルフ、ミルジョージ、リアルシャダイ、トニービン、マルゼンスキーと続きます。
隔世の感あり、ですね。

吉田照哉氏所有のスキーパラダイスでフランスのマイルG1・ムーラン・ド・ロンシャン賞を制した武豊騎手は、凱旋門賞でも吉田氏がトレードで手に入れたホワイトマズルに騎乗する機会を得ました。
ホワイトマズルは前年の凱旋門賞2着の実績と直前の好走に加え、日本の若き名手が手綱を取ることが評価されて、3番人気に支持されました。
わたしも競馬仲間とともに観戦旅行の企画を立て、初めて海外の競馬に触れてきました。

しかし、ホワイトマズルは後方から追い込んだものの、馬群をさばくのに手間取り、結果は6着。
「凱旋門賞であんな乗り方じゃ絶対勝てない!」と激怒したチャプルハイアム調教師のコメントが翌日の英紙に掲載され、我々一行の気持ちを落ち込ませました。

その後、1997年のサクラローレル(故障のため凱旋門賞には出走かなわず)、1999年には半年間の長期遠征を敢行したエルコンドルパサーが2着に健闘。
徐々に日本競馬と凱旋門賞の距離は近づいてきました。

サンデーサイレンスの産駒は1994年に2歳馬がデビューしたのち、またたく間に日本競馬を席巻。
6頭の日本ダービー馬を始め、多数の活躍馬を出して種牡馬記録を次々に塗り替えたのはご存じの通りです。
凱旋門賞には、マンハッタンカフェとディープインパクトの2頭が出走しましたが、両馬とも及ばず。
とくに、ディープインパクトは日本競馬史上最強の称号を背負っていただけに、3着(のちに失格)という結果は、ファンに大きなショックを与えました。
凱旋門賞は、サンデーサイレンスの最高傑作でも勝てないのか、と。

今年の凱旋門賞に挑む日本馬3頭の父は、ディープインパクト、ハーツクライ、ステイゴールドと、いずれもサンデーサイレンスの孫にあたります。
しかも、3頭とも海外遠征の経験があり、ハーツクライとステイゴールドは海外G1制覇も成し遂げています。
2013年のJRA種牡馬ランキングでベスト10に入って大成功している点も共通と言っていいでしょう。

日本から3頭の精鋭を凱旋門賞に送り込めたこと自体が、20年に渡る日本競馬の成果なのかもしれません。
けど、競馬はやはり勝ってこそ、タイトルを掴んでこそ、です。

10月5日(日)、午後11時30分。
ぜひ、リアルタイムで歴史が変わる瞬間をご覧になってください。


■2014年10月6日追記
凱旋門賞に挑んだ日本馬3頭の成績は、ハープスターが6着、ジャスタウェイ8着、ゴールドシップ14着。
惨敗と言っていい結果となりました。
やはり、下準備として、馬も含めた陣営の学習のために、現地で前哨戦を行うことが必要でしょう。
また、凱旋門賞で勝ったトレヴに騎乗したティエリ・ジャルネ騎手が「フランスの、特にロンシャンの芝コースは、起伏が大きくて特殊だ。経験の差が大きいんだ。それと凱旋門賞には戦略が必要なんだ」といったことをレース後に語ったように、競馬場での騎手の経験の差も大きいのだと思います。
このことはすでに言い古されていたことですが、今年の結果はより明確な裏付けとなりますね。
この経験を、来年以降の挑戦に活かされてほしいものです。
成澤大輔(ダビスタ伝道師)
1965年東京生まれ。1981年に競馬ファンとなる(当時高校1年生。その年の年度代表馬はホウヨウボーイだった)。1986年からライター、ゲーム攻略本編集制作を始め、1991年の年末にファミリーコンピューター用ソフト『ベスト競馬 ダービースタリオン』と出会う。1992年の春に『ダービースタリオンを一生遊ぶ本』(JICC出版局)を発刊し、以後15作にわたる家庭用機すべてとPC9800版の攻略本、2冊のファンブックを制作。また、プレイステーション版『ダービースタリオン』とのコラボ誌『ダビスタマガジン』(メディアファクトリー)の編集長も務めた。『ダービースタリオンGOLD』でふたたび“ダビスタ伝道師”を名乗れることに大きな喜びを感じている。
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