2014/09/05 第2回 ダビスタの原点を振り返る(その2)
Text by 成澤大輔(ダビスタ伝道師)

こんにちは。夏競馬も、もう終わってしまいますね。
さて、第1回目のコラムの続きです。

わたしの原点とも言える第1作の『ベスト競馬 ダービースタリオン』(ファミリーコンピューター)は、正真正銘口コミ経由でヒットしたタイトルでした。
昭和末期から平成2年(1990年)にかけて盛り上がったオグリキャップブームの熱気がそのまま競馬ブームへとシフトしていく時代。
それまで予想系のソフトしかなかったゲームソフト市場に突如現れた“サラブレッドのオーナーブリーダーとなって愛馬を育成し、レースへ送り出すシミュレーションゲーム”は、初回生産分が、わずか数日で完売しました。
そのベースには、パソコンやファミコンで熱烈なファンを生み出していた、あの『ベストプレープロ野球』の存在があったのです。
一部のファンのあいだでは、「『ベストプレープロ野球』の薗部博之さんが競馬ゲームを作ったらしい。これは楽しみだ」とウワサになっていたといいます。
そして、実際に遊んだプレイヤーから絶賛の声ばかりが聞こえわたり、『ベスト競馬 ダービースタリオン』は何度再生産しても出荷するそばから売れ続けます。
発売から半年後の1992年5月ごろに10万本を突破。その後も販売数は伸びていきました。

当時、わたしはHiPPON SUPER!誌で毎月メガドライブ(セガ)の新作ソフトレビュー記事を受け持っていましたが、ときどき生じるページのすき間に自分の近況コラムを突っこみ、『ダビスタ』にハマっている様子を報告する、なんてことさえやっちゃっていました。
それを読んだ読者からは「『ダビスタ』への愛情はわかりましたから、メガドライブのレビューもしっかりやってください」とちくり。
その後は記事冒頭の小さな近況コーナーで新刊の告知をするぐらいに留めるようになりました。
(でも、あまり懲りてないかも……)
ほかのところでの伝道活動は、やりすぎちゃいけませんね。

そんなこんなで、1992年7月に念願だった『ダービースタリオンを一生遊ぶ本』が発刊。
引き続き、8月末の『ダービースタリオン全国版』発売に合わせて『ダービースタリオン全国版を一生遊ぶ本』を10月に刊行しました。
さらに、1993年3月にはファンブック『100万人のダービースタリオン』と、『ダビスタ』関連の書籍を立て続けに制作しています。
しかも、その間にはスーパーファミコンのRPG『真・女神転生』(アトラス)の書籍を2冊の分冊で作ったりしています。
いまも愛するこの2シリーズの仕事にまみれて、体力的にキツかったのですが、精神的には充実していたことをはっきり覚えています。

あ、当時を思い出していたら、話がずれました。
“ダビスタ伝道師”を名乗ったのはいつ頃からだったのか、ですね。
最初に伝道師と呼んだのは、たしかHiPPON SUPER!編集部の誰か……。
たぶん先代の編集長だったように思います。
少なくとも、みずから“伝道師”と名乗った記憶はありません。
ただ、HiPPON SUPER!の1993年6月号に掲載された16ページの特集記事「今だからこそ遊びつくす ダービースタリオン全国版」の扉ページ(写真)で、「PRESENTED BY “DERBY-STALLION”EVANGELIST」と書かれています。
EVANGELIST=伝道師ですね。
これが、“ダビスタ伝道師”を名乗った最初の記事ではないかと。
『全国版』の発売から相当の時間が経っている時期でしたから、競馬ゲームファン以外の読者にも強い印象を持ってほしいと思い、表記したものです。
まあ、その効果があったかどうかは、わからないのですけど。

そういえば数年前、仕事でご一緒している20代のある方に「成澤さんって『ダービースタリオン全書』を書いていましたよね。読んでいました!」と言われ、無性にうれしかったことを思い出しました。
“ダビスタ伝道師”の活動の果てには、いつか望外の喜びがやってくることを実感した瞬間でもありました。
“ダビスタ伝道師”が誕生してから21年。
まだまだやめられません。

さて、つぎの第3回目のコラムは、『ダービースタリオン全書』などでさんざん一緒に仕事してきた“ダビスタ四天王”のひとり、“ホーク爺”の登場です。
どうぞお楽しみに。

成澤大輔(ダビスタ伝道師)
1965年東京生まれ。1981年に競馬ファンとなる(当時高校1年生。その年の年度代表馬はホウヨウボーイだった)。1986年からライター、ゲーム攻略本編集制作を始め、1991年の年末にファミリーコンピューター用ソフト『ベスト競馬 ダービースタリオン』と出会う。1992年の春に『ダービースタリオンを一生遊ぶ本』(JICC出版局)を発刊し、以後15作にわたる家庭用機すべてとPC9800版の攻略本、2冊のファンブックを制作。また、プレイステーション版『ダービースタリオン』とのコラボ誌『ダビスタマガジン』(メディアファクトリー)の編集長も務めた。『ダービースタリオンGOLD』でふたたび“ダビスタ伝道師”を名乗れることに大きな喜びを感じている。
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