2014/9/19 第4回
新登場する種牡馬たちと6年のブランク
Text by 成澤大輔(ダビスタ伝道師)

先日、『ダビスタGOLD』で新たに加わる種牡馬4頭が発表されました。
(まだご存じない方はこちらの「ゲーム内容」をどうぞ)

ディープインパクト、キングカメハメハ、ダイワメジャー、ネオユニヴァース。
いずれも国内の競馬で活躍して日本競馬の歴史に名を残す名馬であり、2014年の種牡馬ランキングは、順に1、2、4、6位(JRAでの成績)と、現実の種牡馬成績でもベスト10に入ってくる優秀な血脈の持ち主たちです。
それだけに“新登場する種牡馬”と言われても意外性はありません。
登場しないほうがおかしい面々たちですから。

そりゃパラメータから「ディープインパクトの気性と体質がBね。繁殖牝馬選びが案外難しいかも」とか、「キングカメハメハの距離適性は1600~2000mか、下は1400mでもいいんじゃない」ぐらいは考えます。
けど、サンデーサイレンスの直系父系ではない中堅級……たとえばコンデュイット、ヨハネスブルグ、あるいはスクリーンヒーローといった面々のパラメータも1頭でいいから見たかった。
現実の競馬がサンデーサイレンス系種牡馬に席巻されている状況からすると、せめて『ダビスタGOLD』では逆らいたい心持ちですからね。
いずれにしても、好き勝手にイメージを膨らませられるのは、まだ情報が少ない時分だからこそのお楽しみです。

ただ、視点を少しズラしてみると、『ダービースタリオン』シリーズの6年間の不在は長かったと、つくづく感じてしまいます。
ディープインパクトの産駒がデビューしたのは2010年、すでに4年も前のことになります。
ネオユニヴァースとキングカメハメハの産駒は『ダビスタDS』が発売された2008年に2歳馬がデビュー。
ディープインパクトほどではありませんが、毎年クラシック戦線を賑わす産駒が出ています。

日本の競馬もこの6年で大きく変わりました。
凱旋門賞は4年間で日本馬が延べ3頭2着で好走し、いまや現実にタイトルが手に届く位置にあります。
2012年のオルフェーヴルなど、直線で抜け出す脚の速さで欧州のホースマンの度肝を抜き、敗れはしたけど、「日本にはとんでもない栗毛がいる!」と敬意をもって語られています。
またキズナ、ハープスターと、2年連続して3歳クラシック勝ち馬が秋の国内GⅠを捨てて凱旋門賞に挑みます。
去年のキズナは本番こそ4着でしたが、前哨戦のニエル賞では英国ダービー馬のルーラーオブザワールドをハナ差抑えて1着。
日本ダービー馬が英国ダービー馬をアウェイで負かすなんて、英国の競馬を範として発展してきた日本競馬にとって歴史的な快挙でした。
今年ドバイで行われたドバイデューティフリーでは、ジャスタウェイが各国のトップクラスを相手に6馬身以上の差をつけてぶっちぎり、その際に与えられた130ポンドのレートは、半年近くにわたって世界一の座をキープしています。【※1】

サラブレッドの生産界にも変化が生じています。
メジロ牧場、カントリー牧場(タニノギムレットやウオッカを生産)といった著名オーナーブリーダーが活動を停止し、規模を縮小して新たなスタイルで再出発しました。
サンデーサイレンス血脈の飽和に対する懸念から、先にあげたコンデュイットやチチカステナンゴ、今年産駒がデビューしてすでに7頭が勝ち上がっているハービンジャーなど、ヨーロッパ型の重厚な血脈で構成された種牡馬の導入が増えています。
そういえばステイゴールド×メジロマックイーン牝馬の配合から3頭のチャンピオンホースが誕生し、ピンポイントなニックスが話題になりました。

わたしたち競馬ファンにとっても、超高額配当をもたらすWIN5の導入や、慣れ親しんできた競馬の季節感を大きく変化させる開催日割の自由化が行われ、日本ダービーの翌週から2歳馬がデビューするようになりました。
有馬記念の翌日にリベンジ(?)の開催【※2】が行われたのも衝撃的でした。

このような大きな変化のうねりが『ダビスタGOLD』ではどのように解釈されてゲームの内容に反映させているか、大いに気になるところです。
薗部博之さんは馬主として変わりゆく日本競馬を当事者の視点から見ていたでしょうから、影響を及ぼさないはずはありません。
少しの怖れと大いなる期待を抱いて、完成版が手元に来る日を待っています。


※1:IFHA(国際競馬統括機関連盟)の「ロンジンワールドベストレースホースランキング」。
※2:有馬記念は2011年まで12月の中山開催(通常は5回中山)8日目、つまりJRAの年内最終開催日に行われてきたが、2012年と2013年は翌日の月曜日も休日だったため、中山、阪神ともに9日目の開催が設定され、1400mの阪神カップ(GⅡ)が行われた。
2014年の年内最終日は12月28日になるため、有馬記念は3年ぶりに最終開催日の施行となる。

成澤大輔(ダビスタ伝道師)
1965年東京生まれ。1981年に競馬ファンとなる(当時高校1年生。その年の年度代表馬はホウヨウボーイだった)。1986年からライター、ゲーム攻略本編集制作を始め、1991年の年末にファミリーコンピューター用ソフト『ベスト競馬 ダービースタリオン』と出会う。1992年の春に『ダービースタリオンを一生遊ぶ本』(JICC出版局)を発刊し、以後15作にわたる家庭用機すべてとPC9800版の攻略本、2冊のファンブックを制作。また、プレイステーション版『ダービースタリオン』とのコラボ誌『ダビスタマガジン』(メディアファクトリー)の編集長も務めた。『ダービースタリオンGOLD』でふたたび“ダビスタ伝道師”を名乗れることに大きな喜びを感じている。
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